ある休みの日シアトルダウンタウンを歩いていてふと目に留まった店。
その店にはなんと”ビール材料店”だった。ワシントン州では個人で酒を造ることを禁止していない。だから自分の趣味でビールを造っている人が結構いるようだ。この店にはホップや大麦、イーストから瓶、樽までビールを造る物に関しては何でも売っている。
日本では酒税法違反で捕まるけどアメリカでやる分にはおとがめなしだ!よーし、ワイもいっちょうビール造ってみるか。と意気込んで店の中に入り何が要るのか見て回る。はじめてみるビールの材料は何やらようわからん、おまけに説明は全部英語!結局ビールキットなる一つの缶に全部はいったものを一応店の人に聞いてから購入。値段は結構高く$15ぐらいした。(これだけあれば完成した製品がなんぼ買えるかと思うと、うーん)ついでに愛好者達のコミュニティ紙があったのでそれも一枚もらって帰る。
アパートに持ち帰りふたを開けてみる。中に何やら説明書が入っている。これと先ほどの新聞を辞書と引き引き読む。
どうやらこの缶全部で3ガロン(約11L!)のビールが造れるらしい。
でもこのアパートには(まだその頃には単身で短期貸しのアパートに住んでいた。)そんなに大きな鍋がない。そこで1/3ずつ3回にわけて造ることにした。1升瓶(酒はなんぼでも手に入ります。)2本で約1ガロンだから・・・・・説明書と辞書を読み読み進めていく。途中で麦芽を沸騰させたり、ゆでたホップを濾過したり、たぶんこんな所かなと思いながら。
最後にイースト菌を入れる。イースト菌は生き物なので熱すぎても死んでしまうし、冷たくても発酵しない。説明書によると華氏70から80度ぐらいがちょうどいいらしい。夏前だったので室温はちょうどこんなモンかな、と決めつけ台所にしばらくほって置いた。
初日変化なし、二日目も変化なし。ありゃ、失敗したかな?と思っていた三日目、会社から帰って中を見ると見事に泡立っている。”オーッ”
そして四日目、今度は泡がみんな消えてしまった。
またまたありゃ???もしかして出来た炭酸がみんな逃げたかな? あわててあらかじめ買っていた瓶に詰める。そして冷蔵庫へ。マーサー1号と名付ける
待つこと二週間、冷蔵庫の中で熟成が進んで美味しくできたかなーと期待しながら晩御飯を一緒に食べることになっていた支店長宅へ。
何かといろいろ蘊蓄立てながらその席で栓を開けると、見事シュポッ・・・
とならない。飲んでみると苦味なし。泡なし。ただの麦芽ジュースであった。
ウーーン、考えるにこの失敗はあそこにあった。よし次こそは。と意気込んでまた同じやり方で途中まで行く。今度は泡が立っている状態で瓶に詰めればいいんだ。で、その頃に瓶に詰めそして冷蔵庫へ。
待つこと今度は三週間。シアトルの日本料理屋で今度は披露。・・・栓をポン、泡がブクブクブク・・・・
ありゃりゃ、今度は泡が止まらない。なんだかシャンペンみたい。
でもマーサー2号はビールでなくALE、でもこの前のヤツより数段ビールだ。と言う感想をもらい気をよくして、よしマーサー3号に再挑戦だ。
ところが麦芽は残っていたがイーストがない。それに今までのホップはあまり苦くないので銘柄を買えよう。と意気込んでおなじ店に買いに行く。
よし材料もみんな揃った、再々挑戦。同じ手順で途中まで。そして二日目。もう泡立っている。ありゃ今度は泡立つのが早いなーと思いながら瓶に詰める。今度は冷蔵庫に入れないでしばらく部屋の中に置いておいた。
一週間後。酔っぱらって帰ってきたその晩。部屋中がガラスの破片だらけになっていた。瓶が爆発したのだ。
奥さんからはマーサー2号飲みたかった・・・・なんていわれている。その後は怖いので挑戦していない。
今考えるに敗因は1号から3号まで2ヶ月近くあった。その間にまわりの気温はどんどん上がっていることを考慮しないでいたせいだろうと勝手に解釈している。
やはりビールはREDHOOK、スーパーで買って飲むのが一番。 |