JPSジャーナルNo.4 2009年2月寄稿文

デコレディー贋作リポート
+α


以下は英語の壁が大きく意志疎通が難しいデビッド氏へのメールがわりにわたしが作成した<写真入りリポート>です。

Noritake Collectors' Society(NCS)会報に取り上げられるとともに、

2008年のNCSコンベンションにおいてデビッド氏が講演でこれを公開し

好評だったと森川氏がHPに紹介したのがお目に止まったのか、

日本ポーセリン協会・JPSジャーナルへの寄稿依頼をいただき、2009年2月ジャーナルNo.4に掲載されました。

JPSジャーナルをお読みでない方にもご覧いただけるようHPにUPすることにしました。

ジャーナルではご覧いただけなかったカラー写真や、資料写真をUPしますのでご参考ください。


(英文担当のpochiさんが翻訳しやすい日本語を書きましたので、文章ちょっと変です。。。 m(_ _)m )






一昨年・2007 ”デコレディーに贋作がある” というUS発の情報が日本を走りました。

オールドノリタケのデコレディー作品と言えばデコ・コレクションの花形でもありデザインの良さや稀少性で高額取引をされ
今までの定説では贋作はないとされてきたアイテムです。ところが近年ネットオークション上に真贋の信憑性があやういデコレディーが出没し、
その問題はNoritake Collectors' Society(NCS)会報にも”FAEK NORITAK: Do we have this Problem Now?”と一面で大きく取りざたされました。
その要約が下記です。
 
 ●デコレディーとピエロのフェイク(贋作)と思わざるを得ないようなものがある。

 ●ノリタケのバックスタンプを持ったオリジナルに描かれたようである。

 ●フェイク(贋作)と立証するのが困難である



デビッド氏の悩める顔が目に浮かぶよう(?)だったので、問題解決の為にその様な贋作が作れるのかの
上絵付け教室の先生にご協力をいただき実験作品の作成を試みました。

【1】奇妙なデコレディーとピエロ
     

 これらはUSAのオークション出品物です。
 シャボンを描く円の歪さ、袖に残った背景色のラスター彩など、どこか奇妙で不自然なこれらをどう判断しますか?

 
 


【2】贋作が作れるか検証してみましょう
       
 1.無地ラスター彩プレートを用意します。
   バックスタンプは M-JAPAN印

 
  
 2.描く図案を決めます。

   トーリーカードからUSAオークションの出品物と
   同じ図柄を選びます。

   このトーリーカードのシリーズから
   ノリタケは2柄のデコレディーの図案を起こしているので、
   贋作起用としてはベストなチョイス。
 
 3.デザインのコピーをカーボン紙で
   皿に写します。
 4.カーボンの線を黒のペイントで描く。

   一回目の焼成をします。

 
 5.黒いペイントで描かれた線の
   内側のラスターを薬剤で
   落としました。

   大きな面積の部分の色をキレイに
   塗るためのマスキングしました。
   赤い部分がマスキングです。

 
 
 ※マスキング例

   色を塗り終わったら
   このように剥がします。
 
 6.ドレスを筆で塗る。

   焼成していない絵の具は
   乾いていないのでウェットです。
   その上にマスキングは出来ません。
 
   そのために何回かの焼成を
   必要とします。
 
 

 7.帽子以外の着色の後
   2回目の焼成。

   帽子の赤色は特別な赤です。
   低温土の焼成が必要です。
 
   帽子の赤色を塗って
   3回目の焼成
 
 
 8.このデザインの皿は3回の
   焼成で出来あがりました。
 
 
   マスキングを必要としない
   上手い人が描けば
   少ない焼成回数でできあがります。
 


【3】ラスター彩の落とし方

     

 白地にラスター彩をむらなく塗るのは困難なことと、バックスタンプがあることから
 贋作作成は無地ラスター彩が加工されたと判断するも、
 「ラスター彩に顔などの淡い色の絵付けが可能か」が最大の難関となりました。



 焼成後のペイントを落とす溶剤を
 使います。
 溶剤は市販品を2種類を入手しました。
 いずれも換気・手袋のいる
 危険薬品です。
 
    
 
 ラスター彩は短時間で落ちます。
 長い時間放置すると釉薬まで
 落ちます。
 
 割れている実験ピースは
 焼成していません。

 3回焼成した左の皿とくらべても
 変化はありません。
 

  

 ラスター彩を落とす溶剤を探すのは難しかったです。 それは日本製ではありません。
 しかし、この溶剤さえ手にいれれば、チャイナペイントをする人にとってデコレディーを描くことは難しくありません。




【4】デコレディーフェイクの見分け方

     

 判断材料として、デコレディー作品は手彩色ですが黒の主線は転写紙がほとんどです。
 同一作品の絵のサイズは同じ、大きかったり小さかったりいたしません。
 また上記のピエロに見るようにシャボンの円が歪だったり、シリーズとしてシャボン内に施される別色ラスター彩が
 ないことなどがあげられます。
 こういった妙なレディー・ピエロ柄が容易に入手可能な無地アイテムに描かれている場合はフェィクの可能性が高いと言えます。


  
   


【4】終わりに

 オールドノリタケの贋作と言えばINCCのホームページやNIPPON Porcelainに掲載されるようにある程度の量産品でメープルリーフ印・M-NIPPON印期
 作品の模造品でしたが、今回デコレディーフェィク(贋作)が出回った背景には多様化するホビークラフトと呼ばれる趣味の工芸が挙げられます。

 また稀少性が高額取引となるオールドノリタケデコレディーは量産のでの採算を目的としないフェィク作製には最適な分野です。
 お稽古ごとが盛んな昨今、陶磁器に上絵付けされる方は自作にサインをいれるというマナーを徹底して守っていただくことがホビークラフト品をフェイクとして
 流通させない歯止めだと思います。

 一時期出回っていた信憑性のあやういデコレディー作品も現在ではネット上で見かけなくなりましたが、そういった作品が確かに存在した時期があり
 USA市場から日本市場へ流れ込んだそれらは今もってどこかで流通している可能性があること、また今後このような作品が出回らない保証がないことを
 心にとどめたうえで、オールドノリタケの熱烈なデコレディーファンとして心ときめくレア物の出現を心待ちにしていきたいと思います。

            




ホビークラフト参考作品

▼下記はノリタケのラスター彩皿に描いた私の作品です
  
   

 
 全ての皿はバックスタンプの横に ”emi” のサインがあります。
 チャイナペインターはいろんなメーカーの陶磁器に絵を描きますが自分のサインを入れることはマナーです。






▼左:ノリタケオリジナル
  
                   
▼右:井谷先生が白生地皿からすべてを描いた作品です
  
  
     

 2008年10月第2回JPS研究会に参考出品されたグリーンアイ、向かって右はオリジナル、左は井谷善惠先生作

 チャイナペイント上級者の井谷先生は白地から、ラスター彩までもお描きになりました。そばで見て”井谷作デイジー”のほうが美人でした(≧▽≦)


 
  デコレディーフェィク解明への情報&作製協力をいただいた皆様に御礼申し上げます。 

 井谷先生、荒木様、木村様、ポーセリンアート茉莉花・清水桂子先生


デココレクター様 






 日本ポーセリン協会(JPS)
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チャイナペイント先生のHPです








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